惜別
2006/03/31 (金)

我が家を設計してくれた設計士ウエダさんの訃報を受け取り、
都会へお別れに行く。

無宗教で、献花とお別れの言葉にあふれたウエダさんらしい会だった。
その中のご友人の言葉に、

討論好きな我々の世代の口癖は、「だって」とか「でもさ」とかだけど、
ウエダと話したたくさんの会話の中で一番多かったのは
「そうだよね」だった。

そう、本当に話を良く聞いて、気持ちを何よりも一番に酌んでくれたっけ。
私たちが望んでいた自然な暮らしを、家という形にして目の前に出してくれて(魔法のようだ)
それがここの暮らしの第一歩だった。

ご本人もとても穏やかで自然体な生き方で、
贅沢とは縁遠い、身の丈にあった生活。
仕事も、その他の活動も骨身を惜しまず、儲けよりやり甲斐が先に突っ走る。
正直者を絵に描いたような毎日。
思い返してみると、そのままお手本になってるんだ。参ったな。

何年も会っていなかったけど、
建築中にウエダさんと一緒に何度も通った峠道を運転しながら
穏やかで豊かだった会話や、優しいまなざしを思い出した。
暮れかけた薄紫の空に生まれたばかりの細い月が上向いて微笑んでいた。

家に向かうというだけで、心がほっとする気持ち。
辿り着いた時のあのくつろぎ感。
すっかり忘れていたけど、こんな安堵の一角にウエダさんの仕事が生きている。
どれほどの家族にこんな安らぎを残していったんだろう。

ウエダさん、
安心してね。家は快適です。



 
百姓一記
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