無題
2012/03/26 (月)

32年前、私は定時制の教師として初めて教壇に立った。その定時制はすでに閉校となったが、学校は昨年創立100周年を迎えた。記念誌に原稿を寄せてほしいとの依頼があり、昨年の2月に送付していた。そして3月11日、その学校は押し寄せる津波に校舎は水没し生徒は避難してきた住民とともに3日3晩孤立した。

今日、一通の手紙が届いた。昨年、行われるはずだった創立100周年の記念式典を9月に実施し、記念誌も予定通り発行するという。拙い文章である。

「新任で赴任したのが1980年。あまりの居心地のよさに12年もお世話になってしまった。この間担任は3回で9年。つらかったことやいやになったこと、頭にきたことも一杯あるはずなのに、なぜか楽しいことばかりが思い出される。○○の古民家での生徒会合宿、お化け屋敷の文化祭、○○先生や生徒と最高に楽しんだ修学旅行、○○先生には卓球で勝てても一度も勝てなかった運動会の仮装、涙あふれんばかりの予餞会・・・。そして若い先生とは飲んで歌って教育を語り合い、気がつくと夜が明けていたことは何度もあった。本当に楽しかった、本当に充実した12年だった。私はこうした経験や実践をある研究集会で発表したことがある。生徒会活動を中心とした学校づくりの報告だった。その最後に「生徒の笑顔を見に来て下さい。生徒の明るい声を聞きに来て下さい。○○高校定時制はすばらしい学校です」と自信を持って述べたことをはっきりと覚えている。私は生徒と先生方とのすばらしい出会いの中から、様々なことを学んで今の自分を形成し、教育観や生徒観を確立したと思っている。よく教育の原点は定時制にあるといわれているが、私にとっての原点はまさに○○高校定時制である。私をこのように変えてくれた○○高校定時制に心からありがとうと述べたい。
昨年、卒業生の一人が新米を送ってくれた。「やっと、先生に米をおくられるようになりました」と短い手紙が添えられていた。農家の長男と結婚して10数年。妻として、母として、嫁としての地位をしっかりと築き、家計を支え預かれるようになったのだと思う。定跨制の教師で本当によかったと思う瞬間である。退職まであと数年。最後まで定時制の一教師であり統けたいと思っている。」

こんな人生がようやく今日終わった。万歳、定年退職。

 
テンメイ農園便り
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