農園ネタは何もなし。先週、旧北上町の大室漁港で漁師をしていたＳさんを訪問した。その報告をまとめなければならないがまだできない。大室ともかかわりだけ書いてみた。

「私は石巻に赴任するまで釣りの経験は一度もなかった。同僚から誘われても断り続けていたが、民宿で美味いものを食べようという甘言に誘われ、初めて釣り竿というもの握りしめた。その時が最初にして最後だったが、クーラーに入りきれなくなるほど釣れた。この日を境に私の生活は一変した。渡波から万石浦、蛤浜、月の浦、荻浜から鮎川まで牡鹿半島を一周した。坊主の日は餌がもったいないので、翌日また釣りへ。釣れればまた明日もと欲を出し、女川から横浦、高白、飯子、塚浜、原発前の小屋取まで。釜谷トンネル開通後は雄勝を通り抜けはるか大須まで足を延ばした。釣具屋からハゼがつれ始めたという情報を聞けば、大川小学校を通り長面、突端の尾崎まで。タナゴが上がったと聞けば北上大橋を渡り、白浜海岸でイサダをすくい、小滝の磯場まで。まさに釣り三昧の生活だった。なかでもお気に入りは大室漁港だった。水はきれいで水深もあり、探れば形のいいメバルがあがり、アジやチカが群れを成して回遊してくる。テトラにあがればいかにも黒鯛が釣れそうな（何度挑戦しても一匹も釣れなかったが）絶好の釣り場であった。
あれから３０年。私が通った釣り場は一瞬のうちに壊滅してしまった。」