友逝く
2010/09/20 (月)

8年前、会社をたたみ、夫婦の縁を切って、親族や友人の前から姿を消した友が、突然電話をくれたのはそれから5年もたってからのことだった。その電話を神田駅のホームで受けた。「足切っちゃった」少しはにかんだような、照れを含んだ声だった。糖尿病の末のことだから、かなりのことであった違いないが、本当にしばらくぶりの電話に、こちらがつい構えた声になってしまった。
それから半年後、復帰の葉書が届いた。ひとり暮らしをしながら、体と仕事のリハビリに取り組むとあった。住所が家から車で20分のところだった。野菜を届けながら毎週末訪ねる関係が、また始まった。ところが1年半後、倒れて入院。そのまま徐々に病状を悪化させながら、入院生活が続くことになってしまった。
訃報は友の弟から届いた。「昨日の朝でした。覚悟はしてましたから、正直なところ、ストンと落ち着いたような気持ちです」と素直に感想を吐露してくれた。65年の生涯を華々しく生きた人生が幕を閉じた。

上野の斎場で送る会が催された。家族と本当に親しく付き合ってきた友人だけのささやかなお弔いだった。友よ、安らかに眠れ。

 
縦振屋精兵衛菜園残日録
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