遺影
2008/02/20 (水)

義父が亡くなった翌日、知人のカメラマン大西暢夫さんが、高齢者施設で遺影の撮影に臨む様子がNHKで放送された。人生の末期を迎えて多くのお年寄りが自身の遺影についても無関心ではないことを知った施設長の発案によるものらしいが、数いるカメラマンの中からよくこの人を選んだものだと感心する。大西さんは語りかけた言葉に反応して表情を輝かせた一瞬をシャッターで取り込んでいく。
私は再放送でこの番組を見た。最初の放映時間のときは、義父の遺影の修正に没頭していて、見逃してしまったのだが、何だか不思議なものを感じてしまった。

3年前の2月12日に撮影した写真だった。既に齢90を迎えた義父の遺影を準備しておいた方がいいと、妻と示し合わせて義母の墓前に連れて行って、妻と並べて撮った写真だった。天気はよかったが風が強くて髪は逆立っているし、髭は伸び放題で洋服は着たきりの色あせたジャンパーがしっかり納まっていたが、いつもは苦虫を噛みつぶしたような表情の義父が、この日ばかりは娘と並んでの記念撮影に、少しはにかんだようないい表情をしていた。背景の墓地を消してスタジオ撮影風の背景に変え、合成した髪の毛で整髪し、髭は一本ずつ丁寧に消した。てかりを抑え、色を調整し・・・、会心の一作を義父への餞にすることができたと思っている。

 
縦振屋精兵衛菜園残日録
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