適地、 適期、適作
2005/03/11 (金)

適地適作、適期適作という言葉がある。いうまでもなく、その地域や圃場に合った作物を旬の時期に収穫できるよう栽培する、という意味だろう。そうすることで、しっかりした作物が栄養豊かに収穫できることは疑いようがない。
かつて農家の畑はまさにこの典型であった。夏には夏の作物が豊かに稔り、冬には冬の作物の味わいがあった。毎年自分で採取した種を蒔き、農薬による予防もしなかったし、ビニールなどで保温するということもしなかった。できないものは作らないという一貫した姿勢は、良くも悪くも農家の態度であったと思う。まれに新たな種が持ち込まれ、その地に適した作物であることが分かると、翌年から作物リストに追加された。私が子供の頃にもレタス(たまぢしゃ)、キャベツ(かんらん)、オクラなどが新たに栽培され始めた記憶がある。
当時「連作障害」などという言葉があったかどうかは知らないが、毎年白菜もトマトも牛蒡も立派に食卓に上っていたから、経験で輪作が行われていたのだろうと思う。

今、私は農家であった実家の畑の半分くらいの広さの畑を借りて野菜を作っている。完全自給とまではいかないまでも、カミさんがスーパーで野菜売り場に立ち寄るのは、自分の畑の野菜の値段を確認して密かに自己満足するときだけだ。たまに栽培時期のずれた野菜を食べさせたくて、冬にトマトやキュウリを買ってくることがない訳ではないが。
ただ「趣味と実益を兼ねる」とはいえ、作業の気分としては趣味に走りすぎて「人が作らない時期に作ってみたい」「見慣れない野菜を作ってみたい」等々、たぶんに人の目を意識したものに徐々に偏りつつあるのではないかと思うときがある。
「あの木が芽吹いてきたら」とか「あの辺に日が差すようになったら」というような体で感じる季節感もなく、カレンダーで作業予定を決めているし、地温、気温を上げるためと称してビニールマルチやトンネルを多用しているが、実際それが結果として食べたい野菜を食べたいときに収穫することにつながっているのかは、かなり曖昧だといわざるを得ない気がしている。販売されている種子自体がマルチ栽培やハウス栽培を前提に作られたものも少なくない状況では、ある意味仕方がないとも言えるが、今年はなるべく固定種をメインにした野菜にこだわって、適期適作でやってみるかなと思うのだが。

 
縦振屋精兵衛菜園残日録
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