2005/09/08 (木)
県知事の肝いりで始まった地産地消を目指す学校給食。 気になる農産物の納入価格はどうだろうか? 流通経路は短いし、途中に業者が入る事もない。だから市場から仕入れる品物より安いんじゃないかな..と考えるのが妥当かもしれない。
だけど、実際の納入価格を見てみると市場価格より割高である。品質も市場品の方が良いことが多い。一部の栄養士さんからは不満の声らしきものを聞かれる。これはもっともだろう。
なぜ、市場の品より割高になるのか。 農産物を作る側の論理と、買う側の論理のすれ違いにあるように思う。 子供達に食べてもらうために、丹精込めて育てた農産物。その多くは、無農薬あるいはほとんど農薬を使っていない。 しかし、市場の論理は容赦無い。 どんなに丹精込めて作ろうが、無農薬だろうが価格形成にはほとんど影響がない。純粋な市場論理、教科書に出ているような需要と供給のバランスで決まる。 特に昨今は、輸入も増えて農産物の価格が低落状態にある。 買う側は、この価格をベースに購入価格を想定する。 しかし、作る側は丹精込めて作ったものを、それっぽっちの値段で売れるか ということになる。 今は、地元の野菜を積極的に使おうという流れにあるので、価格形成には生産者の意見が通りやすい雰囲気にある。 だから少々高目の値段でも通っているのではないかとみた。
確かに、手作り無農薬栽培の農産物と、労働コストが格安な国で生産された輸入農産物を同じ土俵で比べられたらたまらない。 しかし、現実には生徒の親から頂いている給食費の枠内で給食を作らねばならない。 学校側は、必ずしも無農薬の農産物を望んでいるわけではない。それよりも、安定性、確実性に重きをおいているように見られる。 しかし、生産者はえてして、無農薬で..というところにこだわってしまう。 こうした意識の違いを見ると、どうも地産地消という言葉に、皆、特に生産者は一種の幻想を抱いているふしがあるようにおもう。
例え地産地消であっても、品物とお金が行き交う立派なビジネスであるからして、特に生産者側はそれを常に意識していないと、自己満足の為だけの地産地消に陥ってしまう恐れがあるように感じる。 冷たい言い方をすれば、生産者が自らの満足のために要求もされていないオーバースペックな品物を作って、かなり割高な値段で売り、買い手が不満を募らせる...こんな構図が見て取れるのである。
別に無農薬の農産物を否定するつもりは毛頭ない。 最も良いのは、学校や生徒の親が地元の無農薬の農産物の価値を評価し、それに見合った対価を支払ってくれることだが現実的にはそれは難しい。
そんな訳で、ウチでは学校給食向けの農産物としては何よりも供給の安定性、そして業者から購入するのとさほど変わらない納入価格を目指して生産していこうと思っている。 その代わり、特に無農薬にこだわることもない。給食には、旬ではない野菜もふんだんに使われているのだから。 これなら、もっと多くの学校に受け入れられてもらえるのではないかと思う。 ちなみに、現在のウチの学校給食向けのレタスの納入価格は、1玉100円をちょっと切る位だ。
蛇足だが.. 学校給食に納める農産物を作っている奥様方が、自分が食べるものを買いにスーパーへ行ったらどんな物を買っているか見てみたい気がする。 売る側の立場から、買う側の立場へ身をひるがえして安い輸入野菜ばかり買っていたらとても面白いものだ..とつい要らぬ想像をしてしまう。
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