菊レポート「キクのための植物バイオ」
2013/01/04 (金)

yuki.gif  吹雪です。
 三箇日が過ぎて初仕事となる人が多いと思います。
 
 現在の植物バイオテクノロジーはメリクロン増殖のウイルスフリー化を思い浮かべる人がいます。正月早々病害虫、ウイルスの話で今回は応用技術でキクにどれだけ活用されているか。
 例1 メリクロン増殖・ウイルスフリー
  言わば「茎頂点培養」である。この話はよく耳にすると思います。挿し芽・冬至芽からでは限られた数しか穂が取れませんが、メリクロン技術では1mmに満たない「生長点(茎頂点)」を無菌空間の容器で植物ホルモンを使用する。カルス(未分化細胞塊)を形成後にサイトカイニン(茎葉芽を作り出すホルモン)で沢山の穂を育てる。
 更にこの芽を植物ホルモンでバランス良く整えた培地(植物によって質や分量が変わる)にて再び無菌状態下で挿し芽をする。
 この技術ではウイルスに感染されてない茎頂点のみを培養するので誕生した植物体はウイルスフリー(ウイルス未感染体)になっている。
 さらにウイルスフリーでは発根率が格段に上がるため挿し芽の増殖がより容易になる。つまり生産者も消費者も扱いやすい苗になることです。
 
 例2 変異花弁の培養による増殖
 キクは突然変異が起こりやすい植物で特に花弁の数枚が違う色になった方も多いでしょう。
 その花弁だけを無菌でカルスを作り新しい株を作ること。変異が認められれば新品種となることもある。
 例1・2で最大の欠点が「最低限の知識・テクニック・設備器材」です。 バイオの世界は自然界・人間界とも完全に隔離された別世界のためだから。

 例3 挿し芽・接ぎ木
 これは物の考え様ですが、私はバイオの世界に入るものだと決めつけてます。
 挿し芽は植物体から穂を採取して穂自体がつくる植物ホルモンと人間が添加してあげる植物ホルモン(オキシベロン・ルートンの「インドール酪酸」や「ナフタレン酢酸」どちらも根を作り出すホルモン)で発根させるのもバイオの世界です。
 接ぎ木は近縁種の台木で穂を丈夫に育てるまたは、穂から根が出るまでの補助の目的がある。これは植物の半融合である。地上と地下では全く違う植物なのだから。
 「菊を中国ヨモギに接ぐ」こともバイオでもある。

 例4 芽変わりによる変異部の調査
 
 三本・七本盆養で育てると1花だけ花色が変わっていることが稀に起こる。だが冬至芽も同じ変異をしている可能性は極端に低い、地上部もどのあたりで変異しているかは不明なのでこの茎丸々1本を培養土の伏せて葉だけを出して発根させる。側芽を既に摘み取ってもキクは葉節に生長点が存在するので再び芽が出る。
 だが、頂花が咲いた後なので花芽分化をしてしまっている。摘心を冬の間に繰り返し行い健全な芽を作り上げてから挿し芽をする。来秋の開花で変異株の冬至芽も同じ遺伝子であることを確認するために数年試験栽培をする。(参考著書「キクをつくりこなす(農文協)」「図解 菊つくりコツのコツ(上村遙 著  農文協)」)

 私の意見では菊愛好家は既にバイオテクノロジーを行ていると考えても良いと思います。

 最後に「図集 植物バイテクの基礎知識(農文協)」で植物ウイルスの防疫対策が面白かったので紹介します。
 ウイルスは確かに厄介なものですが、このウイルスを人為的に改良して弱毒化して予め株に感染させておく技術。するとウイルス症状が小さく抑えられ強い同じウイルスが入ってきても感染はされにくい、動物でいえば「ワクチン接種」である。既に一部のウイルスがワクチン化しているそうです。
 さらに病徴や症状を表さない「植物と共存するウイルス」が存在しているのかもしれないと考えられ、この無病?ウイルスを培養の段階でウイルスフリー苗に感染させて強毒ウイルスに立ち向かうことも夢になっている。
 まずはこの無毒?ウイルスの発見が先決である。
 (本書 P.100 コラム「ウイルスは邪魔者か?」より)

 
北の園芸士の「オニユリ研究」
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