元祖  燐酸水
2009/03/29 (日)

植える花夢菊作理論

燐酸水の作り方


最近の菊仲間の日記に「燐酸水」がよく出てくるのを目にしてとても嬉しくなります。

「燐酸水」なる物は何処にも売られていないし、どんな新しい本にも載っていないもので、ネット上でしか存在しない物なのですが、とても優れものです、根張りを良くして立派な茎葉を作り大輪の花を咲かせるのには挿し穂を取る親株から与えるのがベストです、ぜひお使いいただく事をお奨めいたします。

さて、作り方ですが過燐酸石灰を水に溶かし、3〜4日置いてその上澄み液を回収すれば出来上がりなのですが、簡単に10%液の作り方を書いておきます。

濃度を求める計算式は

溶媒(水)+溶質(過燐酸石灰)分の溶質(過燐酸石灰)×100になります。


10%液を作る場合9リットル(9キログラム)の水に1キログラムの過燐酸石灰を投入して良くかき混ぜる方法がベストです、

燐酸水を回収して残った物には残っている重さと同じ重さの量の水を更に加え良くかき混ぜることにより、5%液が再度取れます、慌てて捨てないでください。

わかっているようであまり知られていない燐酸の話

リン酸の種類

1.アルミニウム・鉄型リン酸

一般に肥料として施されたリン酸は土壌中のアルミナや鉄と化学反応し、安定物質となって蓄積されていきます。
特に関東ローム層といわれる、火山灰土である赤玉土や、鹿沼土、黒土等はリン酸を捕まえる働きが極めて強く捕まったリン酸は、植物にとって何の役にも立ちません。
特に酸性土壌では鉄やアルミナが溶け出すので、固定化が起こりやすいとされます 。

しかしアブラナ科の植物、特にコマツナは根の吸収力が特にあり、特異的にアルミ型リン酸を吸うことができるので東京近郊では昔からコマツナの栽培が盛んなのです。


2.カルシウム型リン酸

酸性の土壌にアルカリ性の石灰(カルシウム)を撒きますとpHがあがります(酸性からアルカリ性に傾く)。pHが上がると土壌から溶け出す鉄やアルミナが減り、リン酸と結合する機会が減ります。

同時にリン酸はカルシウムと結合し、、効きやすいリン酸(根酸を出して吸うク溶性リン酸)に変化します。これをカルシウム型リン酸と呼びます。

乾燥肥料に含まれる燐酸(米糠や魚粕に含まれる)や骨粉、ヨウリン、バットグアノ等がこれになります、固定化されたリン酸は役に立ちませんが、根の先端から分泌される弱い酸によって溶けて吸収されやすいク溶性リン酸は植物の役に立ちます、又ク溶性リン酸は微生物の発酵等の活動によって微生物の体内に取りこまれます。(これは4.有機態リン酸で述べます)


3.水溶性リン酸

最も吸収されやすい形状のリン酸がこれです。
土壌中に水溶液の状態で溶けているリン酸です。過リン酸石灰がこのタイプですが、水に溶けやすい分、流亡も多く、そして鉄やアルミナに遭遇すると固定化されてしまいます。したがって土壌に直接触れないように堆肥などでガードして層状に施肥するのが効果的で一般的です。


4.有機態リン酸

腐葉土など植物体内や微生物そのものに取り込まれているリン酸をいいます。アルミナや鉄に遭遇する機会も少なく、微生物が分解(死滅)するにしたがって、徐々に無機化して植物に吸収されます。このタイプのリン酸は、堆肥を使った有機農法をきっちり行なっている畑に多くみられます。
そもそも微生物の身体を組成する上でリン酸は必要なものなので、土壌中に微生物が増えれば、土の中のリン酸をどんどん吸収し、それを放出することで理想のサイクルができます

と一応燐酸の豆知識を頭に入れてから、次にお進みください。

現在多くの菊を作る方々は、菊作りをするにあたって、良質の田土を手に入れることがなかなか困難なので(それで私は世界最高の粘土であるベントナイトを使った人工田土や土麹をお勧めしている・・・・これも、大げさですが私の大きな発明)やむを得ず赤玉土を使っているのが現実です。

しかし、菊作りを始めたばかりの方や先輩の教え通りに菊を作っている方の中には、赤玉土が、菊を作るために最も良い土と勘違いをされている方が多いように思われます、前に述べたように火山灰土である赤玉土は燐酸吸着力が強く、燐酸の欠乏を招きやすく、菊の生育を妨げるので、それを回避するために最近、多くの方は赤玉土を発酵させて土麹化して赤玉土の表面を有機物でコーティングをして燐酸肥料が赤玉土に捕まらない工夫をしているのです。

前にも「燐酸は根肥え」と書きましたが、燐酸肥料は根の先端や芽先等の細胞分裂の盛んな成長点で特に必要とされ、根がぐんぐん伸びるポットや小鉢等の生育初期に、菊が花が咲くまでに必要とされる燐酸の大半を体内に取り入れると言われます。

しかし、ポットや小鉢等の生育初期のこの時期は、まだ気温の低い時期なので微生物の活動も鈍く有機態燐酸はあまり利用できず、骨粉、ヨウリン、バットグアノ等肥料として用土の中に混ぜてある燐酸も根が用土全体に根を張り巡らしておらず、土の中にある燐酸を根が有効に利用することが出来ない状態にあります。

土の中のほとんどの燐酸が水に溶けない「ク溶性リン酸」の形なので根が酸を出して溶かして初めて燐酸を吸収出来るのですが、その根を力強く伸ばすために与える燐酸は、まず水溶性燐酸を用土の中の腐植に混ぜ込んで施して土に横取りされないようにするのが一般的方法でした、それを私は水に溶かして液肥のように施してみてはと考えたわけです。

しかし水に溶かすと過リン酸石灰は灰色から茶褐色(メーカーによっては青色の場合がある)の溶液になり、その液体が乾いた後は含まれている副成分の石膏によって白くなり葉などを汚く汚し、土の表面を固めて通気性を悪くするのです、そこで私が何年も前から日記に書いている、ハイポネックスの粉を液肥として使う時に用いる方法の応用を思いついたのです。

ハイポネックスの粉はカリ分がとても多く、開花期前頃に良く使われますが、実はカリは窒素肥料の吸収を助け維管束(水や無機養分を運ぶ導管や、光合成によって出来たブドウ糖を運ぶ師管)を太く強くする働きがあるので燐酸と同じく生育初期にも、とても大切な肥料なのですが、ハイポネックスの粉を説明書にしたがって水に溶かして葉の上からかけると、時に葉の表面がガサガサになり病気の後のようなぶつぶつが出来ることがあるのです。

私はまず容器に入れて水で10倍に薄めて10%の溶液を作ります(例えばハイポネックスの粉100グラムに900ミリリットル水を足して良くかき混ぜて3昼夜程置いておき上澄みを容器に取る)それを使うとき100倍〜200倍にして(10%液を薄めるので100倍液は実質1000倍液になる)週に2〜3回使う方法を考え付いたわけです、私はこれを「ハイポ水」と呼んでいます。

過リン酸石灰もハイポネックスの粉と全く同じ方法で液肥化したのですが、「過リン酸石灰水」と書くと過リン酸石灰をただ水に溶いた、にごった液体を連想しがちなので、あえて私は日記の中で「燐酸水」と呼ぶことにしています、この「燐酸水」は、私のものは水溶性燐酸が14%の過リン酸石灰を10倍に薄めて10%溶液にしていますので使う時は更に200倍ほどに薄めて使っています(つまり2000倍)国華園の5,5,5、の液肥を1000倍に薄めた物と比べ燐酸だけを比較してみると「燐酸水」2000倍液でも液肥を1000倍に薄めた物より7対5で濃いことになります。

又、過リン酸石灰は20kgで1500円前後で買えるので1キログラム当たり80円ほどです、それを10リットル溶液にするので2リットルのペットボトル3〜4本は澄んだ溶液が回収できるのでペットボトル1本分が30円前後です、これは同じ量で2000円もする高級な液肥よりも絶対良い結果が出ます。

赤玉土の燐酸水処理

一般に行われている赤玉土の土麹は土の表面を腐植でコーティングするだけで、赤玉土の性質そのものを変えるまでにはならないのです。

赤玉土は燐酸吸収係数(乾燥させた土壌100gが吸収する燐酸の量をmg単位で表したものを燐酸吸収係数といいます)が2000mg程と極めて高いので水溶性の燐酸を吸わせてしまうのが最も良い方法だと私は考えています。 

ただし、赤玉土の燐酸吸収係数が、赤玉土100gあたりおよそ2000mgの燐酸の吸着をすることになるのでそれを水溶性の燐酸を吸わせるには、まず現在市販されている唯一の水溶性の燐酸肥料である「過燐酸石灰」を使う必要があります。

市販されている過燐酸石灰にはおよそ17%の可溶性燐酸が含まれているのだが、水溶性燐酸は13%ほどです、10キロの赤玉土を改良するためには、1,5キロの過燐酸石灰をまぶせばよい計算になるのだが、過燐酸石灰の80%以上が副成分の石膏なので、ここで新たな問題が発生する、赤玉土の10パーセント以上もの石膏が水を含むとどろどろべとべとになり乾くとカチカチに固まってしまい根の生育を阻害してしまう恐れがあるのです。

そこで私は、上にも書いてあるようにあらかじめ過燐酸石灰を水に溶かして、その上澄み液の「燐酸水」使う方法を考え出しました、しかし10%液だと10キロの赤玉土に18リットルもの燐酸水が必要なので、これでは赤玉土が水浸しになってしまうのです。

そこで濃度が2倍の20%溶液を作ります、10キログラムの過燐酸石灰を40リットルの水に良くかき混ぜて溶かして2〜3日置いておき、その上澄みの燐酸水の3リットルをシートなどに広げた赤玉土にかけて雨と直射日光の当らない場所に4〜5日置き乾いてきた頃更に3リットルをかけて、又、4〜5日置き、更に3リットルをかけて乾かせば麹処理をしないでも使えます。

麹処理をする場合には、3度目の燐酸水をかけたあと3〜4日後に他の材料を混ぜて麹処理をすると良いと考えています。

もちろん上澄み液を採取したあとにも、多くの燐酸分が含まれているので更に水を加えて、その上澄み液を燐酸水として液肥として使えます。

 
 植える花夢・新たな菊作りに夢中
[ホームに戻る] [今日の日記へ] [この日の日記へ]