2011/01/06 (木)
いささか古くなったニュースだが、政府の行政刷新会議か設置した規制・制度改革分科会が、 「将来的にJAからの信用・共済事業の分離する方針を決定すべき」との案を大筋で了承したという。 その理由が他の金融機関が他業禁止のなか公平性に欠くというもの。 農協の事業としては、信用(金融)・共済(保険)事業のほかに、 農産物を販売する販売事業、資材等を購入する購買事業の経済事業や、 営農・生活に関する指導事業などがあるが、これらはこぞって赤字事業。 その補填を、金融・保険事業の利益で賄っているのがほとんどの実態である。
それを切り離そうとする狙いは何か。
世の中のもの、何事においても功罪相半ばするわけだが、 政府からみると農協の功罪には「罪」だけしか見えないようである。
その後にはいったいだれがいるのか。
かつての農村は、今でもそういった地域があるかも知れないが、当然のことながらみんなが農家だった。 最小の集落であり、最小の自治組織だった。 田んぼへの水引きなどお互いが力を合わせることで成り立っていた。 人々のつながりが濃密になり、集落の維持につながった。 こうした自然環境・社会環境のなかで、お互いに力を合わせること、 それが産業組合の設立へと発展し、今日の農協・JAがある。 農協には病院経営など地域活動もあり、地域社会への貢献も見逃せない。 病院経営が苦しいのは例外ではないが、それでも地域には残さねばならない。 もうからないからやめた、ではいかない。 それも信用事業、共済事業があればこそ、だ。
つまり、この案は農協潰しにつながることで、TPP参加を推進する案とリンクさせるのは短絡すぎるだろうか。 年明け早々、ア管tare総理がまたぞろTPP参加を言い出した。 日本には、農業にまつわる地域の伝統文化、祭りなどがあるわけで、こういった文化も廃れてしまう。 五穀豊穣を願い、あるいは感謝する。 経済至上主義で走ると人と人とのつながりがますます薄れてしまう。 こういったことまで考えているのだろうかと思ってしまう。 いつぞや、ohyakusyouさんが紹介してくれた、森永卓郎さんの意見を支持するが、どちらが正解というものはない。 ただ、規模拡大を図ればいい、輸出攻勢をかければいい、と言うのは簡単。 規模拡大についてもohyakusyouさんが触れていたが、山あいの1反の田畑を10枚持っているよりも、 平地の1枚1町の田畑の方が、当然作業効率がいいわけで、規模拡大イコール経営拡大とはならない。 いかに作業効率、経営効率を上げるかを考えなければならない。 果たして、それが日本で可能なのか。 (そこで、企業の農業参入を言う人もいるが…) それを日本の地形のなかで、他国と価格(安さで)勝負しろというのはどだい無理がある。 いつか書いた、スイスの山岳農業でさえ、 「ずーっとオラっちの畑だぁ」と指さすのは地平線の彼方だったり、 TGVから見るパリ近郊の農地も地平線だったりするのだ。 アメリカやオーストラリアは見たことがないが、それ以上だろう。
現況を変えようとするときには、不利益を被るであろう側には、 「だから、こうする」という確固たるものを示さないと納得がいかないのは、 われわれの身の回り、日常のことでもおおいにあり得ることだと思うが…。
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