薄いグレー色の雲で覆われた、空一面
降りそうな気配も、晴れそうな気配も無い、生暖かい空気だけが風の無い空間にどんよりとしている

５月連休最後の日、高校生５人を乗せた車が深夜１１時頃、＊＊市内で交通事故を起こした。高校最後の思い出にと、気の合った仲間内で遊びに行った帰りの出来事。
見晴らしの良い直線道路、自動販売機をなぎ倒し電柱に側面から衝突し車は暴走を止めた。３人死亡、２人重症、新聞はもちろんテレビも大々的に報道を行ない、連休後のけだるい雰囲気をよりいっそう重苦しくするニュースだった。

それから１０日後、携帯に電話が
ファンファンファーン〜♪（どんな着メロなん）
『もしも〜し』【あっ！元気〜久しぶりやねーーどう調子？】僅かだが仕事も関係する１０年来の友達、最近はお互いに忙しく何ヶ月ぶりかの声
『あーーぁーどうも〜どうも〜、まぁ〜ボチボチかなぁー』
【あっそう〜、絶好調なの〜へぇーそう、そりゃぁーいいじゃん】おーぉーぉー、なに聞いとんじゃ、まったくもう・・・
【ところでさぁー事故の事知ってるよね？】
『うん？事故？事故って？』
【知らんの？連休最後の日に＊＊市で起きた高校生の交通事故。新聞見てないの？】こら！こらこらーー！新聞くらい見てるっちゅうの、たまには
『えぇ？あっ！あのテレビでやっとったー自動販売機にぶつかった事故のこと？』
【そう、そう】『・・・で、それがどうしたん？』
【なんで〜一緒に乗ってたのが＊＊ちゃんの娘だったんやわね】
『・・・・、うそ！？マジ？』【うそや無いって・・、やっぱり知らんかったやねーー名前もちゃんと出てたやんかーやっぱり新聞見てないやない】くどいっちゅうの！交通事故なんか、しょっちゅうあるし〜そんなに詳しくみーせんわい
『・・・で、＊＊ちゃんは今どうしてるん？』【う〜〜ん、まだ仕事はしとらんみたいやけど・・】
『そうやわねーー』
【落ち着いたら、今度〜みんなで元気つけたろかなぁーて思ってさぁー】『うん、そやね』
でも〜まさか〜まさか、そんな身近な人に、こんな大事件が起こってたなんて・・・

年数回、６人程で誰が誘うとも無く集まって（飲み会とも言う）愚痴を言い合う仲間。＊＊ちゃんは友達の友達だが５年以上にもなれば関係ない話だ。

１０年もの長い間、彼女一人で二人の娘を育て上げた。やっと高校生３年生になった長女、その愛娘がこんなにも簡単に居なくなるなんて・・・。かける言葉もない。

それから１ヶ月
【明日さぁーいつものメンバーで集まるんで、来てよー】
『えーぇーっー！明日、そんなぁ・・・』【なに言ってるん、仲間やんかー、元気つけたらんとーーちゃんと来てよ、ええね！】
行くとも行かないとも言えず携帯をきった

どんな顔して会えばいいのか、どんな言葉をかけたらいいのか・・・・・、気分はどんよりとしたままだ

画像：暗〜〜い、気分だからなし