2003/12/05 (金)
里の秋〜風の歌・2 97/09/11
風の子ふうたくんが、里を訪れてから数年が経ちました。その頃には、欅くんも公孫樹くんもすっかり冬の寒さに参っていました。
欅;神様、ごめんなさい。私は、自分の事ばかり考えていて、何が大切なのか気が付いていませんでした。どうか、この荒涼とした心をあなたの愛で満たして下さい。
公孫樹;神様。私は、自分と他人とを比べる事にばかり時間を費やしていました。さながら、生きているのに死んでいるようでした。こんな私でも、やり直す事はできるでしょうか?
木鬼;なんだいなんだい。みんな、辛気臭せぇなぁ。
二人が祈り続けたある秋の日のことです。 欅くんの葉っぱは見事に紅葉して里の人々の心を癒すようになりました。 公孫樹くんは、葉っぱが黄色くなると共に、銀杏(ギンナン)を枝いっぱいに付けるようになり、里の人々から末永く愛されました。
一方、木鬼くんは回心した二人を見ても、一向に態度を変えなかったので、とうとう本当に神様の怒りに触れてしまいました。
街の中にあれ程たくさんいるにもかかわらず、彼の名を知る人は殆ど無くなったのです。また、材は固く、色がこげ茶色で、日本の樹の中で最も濃い色になってしま いましたので、建築用材としても、一部の風変わりな人間を除けば見向きもされなくなったのです。
これは、ふうたが大きくなって再び里を訪れた時に聞いた話でした。〜おしまい〜
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