加太(かだ)のおばちゃん
2007/01/24 (水)

harenotikumori.gif 今から20年以上も前の話  

毎朝の一番列車で降りてくるおばちゃんの一団があった  ずっしりと重そうな風呂敷包みを振り分けにして、後ろから見ると大きな荷物が歩いているようだった
おばちゃん達は改札を出ると、それぞれのテリトリーに向かう

荷物の中身は、その朝、和歌山の魚市場で仕入れた魚  近海で獲れた太刀魚は銀色に光り、辰が浜の鯖も銀青、加太特産の蛸は動いているし、シャコもメッキも新しかった  注文しとくと、活けの見事な鯛も手に入った  何よりも、市場で焼き上げたばかりの「鰻の蒲焼」は絶品だったね、ちょいと高かったけど・・・

「これは売れやんでもええんよ  帰りの汽車の中で自分で食べるさかい  わたしの元気の素はこれなんよ」
もう70歳はとうに越えてるおばちゃんなのに、雨の日も風の日も婆誰坂を下ってきて荷を降ろして魚を売って、又坂を上って帰っていった

時代の流れでこの街にも大きいスーパーや生協が同時に進出、市場直送の魚が並ぶようになり つい そちらで間に合わせるようになった  冷凍の魚の味にも慣れた  

気がついたら、おばちゃんらは もう姿を見せんようになっていた  どうしたはるんやろ?  病気になったはんのちゃうやろか  あの美味しい鰻もういっぺん食べたいね       
噂もいつしか消えてしまった

加太のおばちゃんと魚がしきりに恋しいこの頃である

 
婆誰坂の家庭菜園 和歌山
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