ブランド米「ヒノヒカリ」。
2006/10/18 (水)

毎日新聞 2006年10月18日 東京朝刊より

コメ:新米の季節(その1) 打倒コシヒカリ、各地から独自ブランド米が名乗り
 ◇北の大地・高級「八十九」/減農薬栽培に向く「サイノカガヤキ」

 日本一の米どころと言えば、新潟県や東北を思い浮かべる人が多い。ところが、今年北海道が、販売量で新潟県を抜き全国1位になった。埼玉県や九州でも特徴のある米作が模索されており、米の世界では今、大きな変化が起きつつある。【小川節子】

 04年4月、改正食糧法が施行され、計画流通制度に代わって、生産者や流通業者に広く創意工夫が認められるようになった。各産地とも「売れる米作り」を目指して新たな生産・販売方法を模索し、これと連動するように、新潟のコシヒカリを頂点とするブランドの序列にも影響が出始めた。

 農水省によると、06年6月までの米の年間需要実績(販売実績)は、北海道が66万トンで新潟県の57万トンを抜いて1位になった。一昔前は北海道の米といえば、あまりおいしくないイメージもあった。だが、88年に「キララ397」が登場、その後「ホシノユメ」「ナナツボシ」などの新銘柄米が続々と販売され、人気を集めてきた。

 「キララ」は米の粒が硬めで炊き上がりがしっかりしているため、牛丼などの外食産業で売れ行きを伸ばし、ピラフ、チャーハンなどの冷凍食品用としても多く出回っている。「ナナツボシ」は粘りが強く味もいい点が評価されている。また、無洗米にすると逆に味がよくなるという、これまでの常識を覆した利点を生かして無洗米中心に販売されている。

 また、今秋には北海道が特に力をいれ品種改良した「オボロヅキ」が「八十九」というブランド名でデビューする。粘りが強く、つやつやしてやわらかい米で、地元は「コシヒカリ」にも負けないブランドになると期待している。パッケージデザインも有名デザイナーを採用した。ホクレン農業協同組合連合会の米穀事業本部の課長補佐・南章也さんは「業務用としてキララを、家庭用としてはナナツボシやホシノユメを、今回デビューする八十九は高級ブランド米として販売していく」と販売戦略を語る。

 また、埼玉県は2年前から新銘柄「サイノカガヤキ」で販売攻勢をかけている。作付面積も当初の1200ヘクタールから5500ヘクタールと急増。「埼玉ブランド」を前面に出して市場に打って出る初めての米になる。

 最大の特徴は病害虫に対する抵抗性が強いため、減農薬栽培に向くことだ。従来の米の栽培に比べて半分の農薬で済み、価格面でも味の面でも十分に戦えるとみている。

 佐賀県は首都圏の小売店をターゲットに「ユメシズク」を売り込む。生産量はまだ少ないが、まず首都圏に浸透してブランド力アップを目指す。約50の専門店が取り扱うようになったという。

 一方、日本米穀小売商業組合連合会(加盟1万店)では、各産地間で始まった独自の取り組みを追い風に、業界全体の底上げを図りたい考えだ。5年前から「お米マイスター認定制度」を設け、米の専門知識に基づく対面販売や宅配の充実など、量販店にはできないきめ細かなサービスで顧客開拓を進めている。

 ◇料理に合わせ、銘柄を選ぼう やはりおいしい、精米したて

 多様な銘柄米が流通する中、好みや料理法で米を使い分ける動きも出てきた。東京都目黒区の米穀店「スズノブ」では、年間を通じ店内に全国の産地の米40〜50銘柄が並ぶ。店主の西島豊造さんは、顧客と話をしながら、その人の好みに合った米を紹介している。

 「自分はどんな米が好きなのか、考えずにコシヒカリを一番だと信じ込む時代が続いてきた。こうしたコシヒカリ信仰は、米文化を育てなかった面もあるのでは」と、西島さんは話す。

 「コシヒカリ」は粘りと甘みがあり、肉料理などのこってりしたものにあう。「ヒトメボレ」(岩手県、宮城県)はしっとり柔らかめで和食向き。「アキタコマチ」(秋田県)はさっぱり系で朝食に食べるともたれない。「ヒノヒカリ」(九州一帯)は米の粒が立つぐらい硬めだ。さまざまな産地の米を食べ比べてみて、自分にあった米を見つけることが大切だと、西島さんは指摘する。

 そして、米はやはり精米したてがおいしい。「2週間で食べきれるくらいの量を買って、密閉容器にいれて冷蔵庫で保存すると、味がぜんぜん違う。数種類の銘柄米をそろえ、料理に合わせて炊いてみては」と勧める。


i0 (1) ・「ヒノヒカリ
 昨年から、この品種を作付けしています。
(2)
(3)
 
『畑のつづき』日記
[ホームに戻る] [今日の日記へ] [この日の日記へ]