入所日の緊張の朝を迎えた。
家族のみんなが心配する中、義母だけが何も知らされていないのでのんびりと食後のお茶などして・・・。
そこに次々と説得するメンバーが訪れることになる。

もっと数日前から、ゆっくりと本人にきちんと訳を説明して入所を促せたらどんなに良いかとは思います。
だけど、それが出来なかったのは・・・。
必死になって説明しても次の日には必ず全て忘れてしまうかなり重度のアルツハイマー型認知症だからです。

もう一つ、気分が目まぐるしく変わります。
３分前に行く！と言ったのに、絶対に行かない！と言い出します。
だから、事前の説得は無理で無駄な諍いになってしまうので当日の朝、その場での説得以外に方法が見つからなかったのです。

次男の主人と私・・・。
一緒に住んでいる長男には、我儘を言って言うことを聞かない母だが、離れて暮らしている次男の言う事なら聞いてくれるはず・・・。
との起用だが、果たして・・・。

まず、母と二人暮らしで同居している長男からの説得。
断れない用事で３日間ほど大阪に行かなくてならずに家が留守になるのでその間だけデイサービスにお泊りで（ショートステイという）行って欲しい！とのこと。

次に次男から、長男が留守中、面倒を見てあげたいけど、同じ時に出張で遠くに行くのでそれが無理なのでショートステイに行って欲しい！と頼む。

一人で家にいて留守番しているから大丈夫！との答え。
私が、先日夜中にガラスを割って泥棒に入られたから危ないから一人で留守番は無理！だと話すと、
すっかり自分の家に泥棒が入った事を忘れていて・・・。
え〜、泥棒？うちに泥棒が入ったの？本当に？
全く覚えていなくて・・・。

なんとか促して支度をしてもらった頃、施設の人達やケアマネさんが到着。
さて、行きましょう！になった途端に
母は、絶対に嫌だ！どこにも行かない！家からは一歩も出ない！と椅子にしがみつく。
全員でああだ、こうだと理由を付けて促すが効果なし！

嫌がっている人を無理に連れ出す訳にも行かず・・・。
嫌がって興奮していると何を言っても無駄らしい。
施設の人達に一旦退去するフリをしてもらう。
駐車中の施設の車が本人のいる場所から見えているので、バレないように車は離れた通り沿いに停めてそこで待機してもらい再度家族だけでの説得。

もう、施設の人は帰ったから大丈夫。
これからお父さんが入院している病院にお見舞いに行こう！　車で連れて行ってあげるから。
それでも、御見舞なんて行かない！ずっとここにいる！
どこにも行かない！と言うので・・・。

そこで、主人（次男）からの鶴の一声？（苦笑）
分かった、じゃあ僕だけでお父さんの病院へ行ってくるからこのことをお父さんに話しておくよ。
お母さんは、御見舞は行きたくない！お父さんのことなんて心配じゃないらしいと！
その言葉を聞いた途端に椅子からスクッと立ち上がった！！
驚きだ！長年連れ添ったお父さんに怒られたくないらしい。
その後、お化粧までして車に乗り出発！

グループホームの施設に到着！
病院に着いたと思い車からすんなり降りて、出迎えてくれた人に美味しいお茶が入っているから一緒に飲みませんか？と促され、先程の施設の人達が出迎えてくれてもあらっ？とも思わずに楽しそうに中に入って行った・・・。
笑顔で楽しそうにニコニコして・・・。
車で連れ出して見たものの、降りない！とダダをこねるんじゃないか？
車から降りても施設の中に入らないで駄々をこねるんじゃないか？
と心配したけど、もうお見舞いで病院へ行くことを忘れてしまったかのようです。
中に入って知り合いの人を見付けると隣に座って話し込んだりして楽しそうにしています。とのこと・・・。

あらっ、そうなのね・・・。
良かった！良かったけど・・・。
とにかく本人に合って気が変わると困るので、持って行った洋服や備品、寝具など全てをお願いして慌てて立ち去ることに・・・。

なんだか、幼稚園に行きたく無いと駄々をこねる幼児と一緒、散々駄々をこねたのに心配して幼稚園に行ってみると誰よりも楽しそうにはしゃいでエンジョイしている。
あの時、あの場所から離れるのが嫌だ！と思ったけど、行ってみたら楽しくて、そんなこと全て忘れてしまったのでしょう。

夜になって暗くなると家に帰りたい！と言い出すのでしょうか？
とても心配ですが、そこはその道のプロにおまかせください！とのことです。
入所する大半の人は、嫌々来て帰りたくなるそうですが・・・。